【0:1:1】道具屋マガイモノ【15分~】


《ジャンル》

ファンタジー


《あらすじ》

道具屋マガイモノ。人間領にあるとある道具屋。売っている商品が紛い物なのか店主が紛い物なのか不思議お店。そんなところへ今日も一人の冒険者がやって来る…。


《登場人物》

【アルセ・エスドルム・メイル】

勇者パーティの1人。実は魔王。心根は優しいのかもしれない。


【べドリージャー】

人間領内で道具屋を営む魔族。紛い者と呼ばれることが多い。




アルセ:よぉ、まがいもん


べドリー:おや、いらっしゃいませ、魔王さーーー


アルセ:その名で呼ぶでないと言っている


べドリー:これはこれは、失礼しました、冒険者さま


アルセ:はぁ


べドリー:高潔な冒険者さまがこのような店へ来ていただけるとは


アルセ:そういうのいいから


べドリー:では本日はどのようなご用件で?


アルセ:上級ポーションと聖水、精神薬の補充よ


べドリー:おや?つい先日もご購入されてませんでしたか?


アルセ:ええ、そうね


べドリー:冒険者さま程のお方が、あれだけの量で足りなかった、と?


アルセ:くっ…あのバカか無鉄砲に突っ込むからよ!


べドリー:おやおや、それはもしや


アルセ:そうよ、あのバカ勇者よ!


べドリー:なるほど、相変わらずのようですね


アルセ:相変わらずどころか、いつになったら人の話を聞くのよ、あのアホんだらは!


べドリー:これはまた、ご立腹ですな


アルセ:なぁにが『ゾンビエース?ジャイアントグール?上級レイス?へへっ、この聖剣にかかれば関係ねぇ!瞬殺だぜ!!』だよ!!

アルセ:瞬殺されてんのはてめぇじゃねぇか!!


べドリー:やはり聖剣といえど、多勢に無勢では太刀打ちできなかったようですな


アルセ:ほんとよ!もう!!


べドリー:しかし、聖女さまもご一緒だったのならば、そこまで厳しいものには


アルセ:なったのよ!なるのよ!あの聖女ならなっちゃうのよ!!


べドリー:は、はぁ…


アルセ:『瞬殺できるの?きゃー勇者さまかっこいい!』『勇者さま死んじゃったー。えーい。わぁ、復活した勇者さまもかっこいい!ファイト♡……ほら早くてめぇもザコ共倒してこいよ』じゃねぇから!!

アルセ:支援魔法なり神聖魔法を奴らにぶつけろよ!!何してんだよ、この女狐がよぉ!!


べドリー:これはまた…


アルセ:こんなんじゃ、一生あのダンジョンクリアできないよ!?魔王討伐なんて夢のまた夢だよ!?


べドリー:大変そうですな


アルセ:大変なのよ!だからこうして消耗品を買いに来てるの!


べドリー:ふむ、その様子ならば別に冒険者さまが共に行く必要もないのでは?


アルセ:うぐ…


べドリー:家の方には、しばらくは襲撃は無い、とでも伝えておけば、充分、報告になるような


アルセ:それだと私が困るの!!


べドリー:と言いますと、、

べドリー:あ、将軍達ですか


アルセ:そうよ、あいつら1回痛い目に合わせないと、一言目には『戦争だ!!』じゃない!


べドリー:まぁ、腕っぷしに自信があるからこそ、あそこまで上り詰めたというものもあるでしょうからね


アルセ:それに領地の事しか頭にない貴族達よ!あいつらもボコボコにされるべきだわ!


べドリー:それは…人間の?魔族の?


アルセ:あーもう!両方でいいわよ!正直、うちらの貴族のがめんどくさくてしょうがないけど!!


べドリー:…戦争が起こってくれるとこちらとしては儲けさせていただけるのですがね


アルセ:は?


べドリー:い、いえ、冗談ですよ


アルセ:なんか勘違いしてるみたいだけど、、この国、戦争が起こると道具関連はお国様に無償提供しないといけないそうよ


べドリー:…え?


アルセ:嘘じゃないわよー、勇者さまと組む事になって、王様と会った際に直接聞いたから


べドリー:なななな…


アルセ:あら?そうなると困っちゃうのは誰でしょうねー


べドリー:ならば、魔族領に戻って商売するだけですよ


アルセ:うん?うちも同じようにするけど?


べドリー:ちょ、ちょっとまってください!それはあまりにも、あまりにもですよ!


アルセ:だから、私に協力しなさいって言ってるのよ


べドリー:そりゃ元から協力する上ではいますけど


アルセ:そうよね、良かったわ


べドリー:戦争自体に賛成してるわけではないですからね


アルセ:全く、戦争推進派は歴史の勉強からやり直してきなさいって話よ


べドリー:魔物に関して言えば我々も被害者側でございますからな


アルセ:だからこそ、協力して対応にあたるべきだと思うのに、どいつもこいつも…!


べドリー:その辺に関しては、種族関係ないということですか


アルセ:そうね、魔族に一部過激な人達がいるように、人間も人間で中々にドロドロのようだったわ


べドリー:やはり、むずかしそうですな


アルセ:それで、魔族達の動きはどうなの?


べドリー:そうですね、、


べドリー:仰られていた通り、将軍様方は戦いたくてしょうがないようですし、貴族の方々は土地の広さマウントを取り合ってましたねぇ


アルセ:…はぁ


べドリー:『全て滅ぼしてしまえば勇者なんて出てこない問題ない!さぁ戦おう!我が同士達よ!!』『おたくの領地せっっま、かわいそぉ、それじゃあ人間領に攻め込むしかないですねぇ』といった感じですかね


アルセ:何度も滅ぼしたし、滅ぼされたじゃないの…なんでそれがわからないかなぁ


べドリー:『魔王様は日和られておる、我らの圧倒的力を持ってすれば数の差など関係ない!』とも言ってましたね


アルセ:あーもう!だから私はなんとしても勇者を魔族領まで行かせてアホ将軍どもを軽く懲らしめてもらいたいのに!


べドリー:勇者さまが弱すぎると…


アルセ:弱すぎるってもんじゃないわよ!ほんとに!!


べドリー:ふふっ、楽しそうでなによりですよ


アルセ:楽しくなんかないわよ!!


べドリー:じゃあ別に冒険なんかせず、鍛えてあげたらいいじゃないですか


アルセ:そ、それじゃ意味ないじゃない


べドリー:そうですか


べドリー:あ、『お前も来いよ、一緒に見たことない景色、見ようぜ』でしたっけ?


アルセ:それがどうしたのよ


べドリー:その言葉に惚れちゃったとか?


アルセ:は、はぁぁあ!?


べドリー:あー、『なんだよ、その髪の色、すげぇきれいじゃねえか。なんで隠してんだよ。ほら、こうすれば、、あれ?よく見たらお前ってかわいいんだな』でしたっけ?こっちでしたか


アルセ:なななななな何言ってんのよ!!この私がそんな陳腐な言葉で、ほほほ、惚れるとかないし!!


べドリー:ふふっ、ですよね


アルセ:そうよ!


べドリー:そうですか


アルセ:ニヤニヤしてんじゃないわよ!いいから早く用意して!!


べドリー:はいはい、わかりましたよ、冒険者さま


アルセ:ふぅ…もう


べドリー:よい、しょっと、、これだけあればどうでしょう


アルセ:そうね


アルセ:すぐにこれだけ用意できるって、、やっぱりあんたのとこ売れてないの?


べドリー:どうでしょうかね


アルセ:ここに客が来てるの見たことないんだけど?


べドリー:こう見えても大口の取引をしてくださる方がいらっしゃるんですよ


アルセ:ふーん、まぁいいわ、いくら?


べドリー:えーっと、こちらになりますかね


アルセ:…へ?


べドリー:どうなさいました?


アルセ:ちょっと!これ、前回の3倍もするじゃない!!


べドリー:ええ、先日大量に買われるお客様がいらっしゃったので相場が変わってしまって


アルセ:それって私じゃない!!


アルセ:まって、大口の取引も…!?


べドリー:まぁ、間違いではないですね


アルセ:こんのボッタクリまがいもんが!!


べドリー:おっと、すみません、0を1つ付け忘れていたようでーーー


アルセ:もう!いいわよ!!これでもそこらで買うよりは安く済んでるから!


べドリー:ありがとうございます。おまけで魂喰いノ実(たまぐいのみ)もいくつかつけておいたのでお使い下さい


アルセ:これって…。


べドリー:低級のレイスならば、それ一粒で千体近く消滅させられると思いますよ。もちろん上級の魔物達にも数は減りますが効果はあります


アルセ:ふ、ふん!別にこれでボッタクってるって言ったこと取り下げるとかしないんだから!


べドリー:ふふっ、そうですか、冒険者さまが無事でいてくれるなら充分です


アルセ:全く…。


べドリー:またのご利用お待ちしておりますよ


アルセ:わかったわ、それじゃ


べドリー:いってらしゃいませ、魔王さ----


アルセ:ジーーーー


べドリー:冒険者さま


アルセ:それで、よし!

アルセ:行ってきます!




べドリー:(アルセ・エスドルム・メイル、あなた様ならば、きっと…)




0:おしまい



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